栃の実と煎餅の話

とちの 実 煎 餅 が で き る ま で 

栃の木のお話

 

栃の木は、トチノキ科・トチノキ属の落葉広葉樹。高さ30mにもなる高木で、直径1mを超える巨木も珍しくありません。
ヨーロッパ産のセイヨウトチノキは、フランスではマロニエと呼ばれ、街路樹などに使われています。
5月頃花が咲き、9月に実が採れます。花はミツバチが好むことから、養蜂採蜜されています。

 「栃」の語源は諸説ありますが、その昔、村の境界線に植えられ、「おらが村の土地だ。」とのことから「とち」と呼ばれるようになったとの話もあるようです。
 山間地で作物の採れにくっかった岐阜県飛騨地方では、栃の実がでんぷんを多く含むことから、冬場の救護食として貴重でありました。その為、栃の木は伐採を免れ、大切に保護され巨木が多く残されてきました。
 食料としての意味合いが薄れてきてからは、巨木故に臼の材料や一枚物のテーブル板に用いられてきました。きれいな木目が出て高級木材となっております。


縁起の良い食べ物

5月に花が咲き、9月に実が採れます。
栃の花言葉は「贅沢」「豪奢」「健康」とされています。

下呂の栃蜜

花はミツバチが好むことから、養蜂採蜜されています。
花の種類により咲く時期が微妙に異なるため、栃の花が咲くころに採蜜されたものが栃蜜となります。
WEB-SHOPよりお買い求めいただけます。

大きな栃の葉

葉は非常に大きく、朴葉に似た形状をしています。5〜7枚の葉を掌状につけるのも、朴葉に似ています。

栗とは違うのです

種子は栗に似ておりますが、ツバキの実に似た皮に覆われています。イガに覆われた栗とは違うところです。

イノシシも食べない?

栃の実はとてもアクが強く、虫が食べるだけでイノシシも食べません。
縄文時代より、あく抜きをして食べる技術があったとは人の知恵は素晴らしいと思います。

栃の実の精霊?

縄文土器にはこのようなモチーフがあります。
縄文時代の遺跡から栃の実が多く見つかっております。



栃の実の精霊を表現しているとする学者さんもいます。

栃の実のお話


種子はデンプンを多く含み、あく抜き(渋抜き)して食用に用います。食用の歴史は古く、縄文時代の遺跡からも出土しているそうです。あく抜きはコナラやミズナラなどの果実(ドングリ)よりも手間がかかり、長期間流水に浸す、大量の灰汁で煮るなど非常に手間のかかる作業で技術が必要ですが、あく抜きしたトチの実をもち米と共に搗いた栃餅(とちもち)が現在でも下呂市の一部地域でお正月の郷土食として受け継がれています。 
 栃の実には、タンニン・サポニンといった苦み成分が入っており、肌の調子を整える・血糖値上昇を抑える・胃の調子を整える効果があります。また、栃の実に含まれるポリフェノールは赤ワインの30倍以上の抗酸化作用があるとのことです。
 栃の実は、西洋では【馬栗=ホースチェスナッツ】と呼ばれ、馬の胃腸薬として用いられているそうです。
 
とちの実の味は、糖分との相性がよく、合わせることで黒糖のようなコクのある味わいとなります。鼻から抜ける独特の風味に癖になる人がいます。

とちの実煎餅や、とちの実スウィーツは、その風味を生かして作られています。


栃の実のあく抜き

 
千寿堂で使用される栃の実の大半は、地元下呂で採れたものです。
栃の実のアクを抜く作業はとても手間のかかる作業です。

①虫出し

収穫した栃の実を2,3日水につけて水を出します。

②天日干し
2か月くらいにかけてカラカラになるまで天日で干します。

③鬼皮むき
乾いた実を再度2から3日水につけてよくふやかします。その後お湯につけて鬼皮を柔らかくして、「へぎ」といわれる道具で鬼皮を剥き、中身を取り出します。

④水さらし
取り出した中身を網袋に入れ、流水で7日ほどさらします。 

⑤灰汁さらし:珈琲のドリップの要領で、楢や樫の木の灰に熱湯をかけ漉して、灰汁を抽出し、その汁に実を2から3日漬け込みます。

⑥水さらし:再度流水にさらし、指で潰れて、苦みがなくなれば完了。苦みがあれば、再度⑤⑥を繰り返します。

 

以上が、あく抜きの工程です。2か月から3か月をかけてこの工程を行います。とても手間がかかるため、あく抜きした実は、高価なものとなります。

 昔は、いろりがあったため、あく抜きに使う灰も容易に手に入りましたが、現在では質の良い灰が手に入りにくくなっております。

 また、あく抜きができる方もどんどん減っており、入手も難しくなっております。

現在でも、下呂市の一部地域で正月にとち餅を食べる風習が残っていますが、いずれあく抜きができる人も途絶えてゆくかもしれません。

先人たちの知恵・下呂の食文化を守るたには、栃の実の消費を増やし、手間賃がしっかりととれるようにする必要があります。

昔ながらのとち餅だけでなく、若い人の嗜好に合うように、スイーツを開発しています。
他では味わえないスイーツはこうしたきっかけで生まれました。

とちの実煎餅の作り方


煎餅の生地づくり


あく抜きが済んだ栃の実は、来年の収穫まで真空して冷凍保存しています。煎餅の生地に練り込むため、少しづつ解凍してエキスを仕込みます。

このエキスをソフトクリーム・シフォンケーキ・モンブランなど様々なスイーツに使用しています。

 

小麦粉・ザラメ・卵・栃の実エキス・重曹をミキサーで攪拌して生地を作ります。

寝かせることでグルテンが出て、独特の歯ごたえを出すことができます。

生地の硬さが製品の硬さや出来栄えに影響します。その日の気温や湿度により微妙に水分量を調整しています。


焼成作業

 
仕込んだ生地を「チャッキリ」という道具に入れ、生地を焼成機に充填してゆき、約6分の焼成時間で煎餅が焼きあがります。

 
生地の状態は、その日の気温・湿度・作ってからの経過時間などにより、刻々と変化してゆきます。

生地の状態を感じながら、充填量・機械の回転速度・ガス圧などを微妙に調整してゆきます。

均質な煎餅に仕上げてゆくのは永年の感の世界・職人技といえます。 

成形作業

 「耳掻き」と呼ばれる成型作業を行っています。煎餅の回りのバリをやさしく掻きとり、小判型の煎餅が出来上がります。

焼きたての煎餅は柔らかく、冷めてくると煎餅に含まれる砂糖が固まり、パリッとした煎餅になります。

固まるまでのわずかな時間で耳かき作業が行われます。冷めると耳だけでなく煎餅も割れやすくなるからです。 

包装作業

 
この段階で、割れ・欠け・焦げなどの品質チェックも行いながら 

一枚一枚手作業で丁寧に包装しております。 

賞味期限30秒! 焼きたてアツアツ やわらか煎餅

千寿堂の直売所に来ていただきますと、焼きたてのやわらかな煎餅が食べられます。

 

賞味期限はわずか30秒!

 

焼きたてのやわらかな状態から徐々に固くなってゆく食感の変化が楽しめます。

 

下呂温泉に来た時にしか食べられないものです。ぜひお立ち寄りください。